研究分担者 |
五條堀 孝 国立遺伝学研究所, 教授 (50162136)
大野 典也 慈恵医科大学, 医学部, 教授 (60147288)
中田 篤男 大阪大学, 微生物研究所, 教授 (80029769)
足立 昭夫 京都大学, ウィルス研究所, 助教授 (90127043)
吉田 光昭 東京大学, 医科学研究所, 教授 (80012607)
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研究概要 |
昨年度の成果に基づき,HIV研究の着実な進展がみられた。組換えワクチニアによる遺伝子発現系を用い,HIVゲノムがウィルス粒子に取り込まれるのに必要なゲノム領域をほぼ同定した。又,HIVによる細胞融合の研究のために,HIVのenvとヒトのCD4を発現する組換えワクチニアを作製した(渋田)。HIVのrev遺伝子と成人T細胞白血病ウィルス(HTLVー1)のrex遺伝子は,共に非スプライス型ウィルスRNAの蓄積に必要であるが,それは細胞核内でウィルスRNAがスプライシングや分解を受けないように安定化させているためであるとの実験的示唆を得た(吉田)。HIVとサル免疫不全ウィルス(SIV)間で各種のキメラウィルスを遺伝子工学的に作製した。その中でカニクイザル細胞に感染しうるのはSIVのLTR,gag,pol,Vif遺伝子を持つものであり,envは関係なかった。これらの遺伝子の宿主特異性に関する作用の検討が可能となり,又,このキメラウィルスがサルに免疫不全を惹起しうるか否かが興味深い(足立)。HIVのプロセスされたgag蛋白質p24とp17,並びに調節遺伝子nefの産物を大腸菌で大量に産生させ,高度に精製した。高感度の診断試薬として有効であり,特にnef抗体の検索は新しい領域である。これらの蛋白質は研究用資材としても重要である(中田)。CD4上の単クロ-ナル抗体OKT4との結合部位がHIVのenvとの結合部位とは完全には一致しないことを明らかにし,そのため新しい抗CD4単クロ-ン抗体の作製を開始した。ポリエ-テル系抗生物質がHIVの感染初期過程を強く阻害することも見い出した(大野)。塩基配列の比較解析から各種レトロウィルスの系統樹がさらに詳細になった。そこからHIVがSIVグル-プ間の組換えで出現した可能性が示唆され,論議の対象となっている。又,HIVの変異の方向性を解析しワクチン開発の資料を作成している(五條堀)。
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