研究概要 |
ヒト免疫不全ウィルス(HIV)が感染することによって,ヒトの免疫担当細胞であるT,Bリンパ球やそれらの局在する器官であるリンパ装置が破壊する機構を主として検索しているが,本年度は抗体作成,リンパ球マ-カ-の感染による変化,エイズリンパ節破壊過程の変化,ウィルスと感染細胞の接着の機構およびリンパ球破壊防止のための試みの諸点において成果をえた。抗体はHIVの産生する調節蛋白であるtatに対するマウス単クロ-ン抗体を作成したことであり,今後これをもちいることによってtat蛋白の患者生体内における動態を解明できる。患者リンパ節破壊の過程については我々は以前にリンパ節内でB細胞の分化に担当するマクロファ-ジのHIVによる破壊が主な要因の1づてあることを示したが,今年度はこれに酷似した変化がHIV非感染者のへんとうにも見られるがそれらとHIV患者の変化の間にはいくつかの大きな差異もあることを示した。リンパ球マ-カ-については,T・Bリンパ球ともHIV感染によってその細胞膜上に表出するマ-カ-(レセプタ-)が著しい細胞内へのもぐりこみ(down regulation)を示すこと,そのようなB細胞の一部はHIV感染によっても死滅せず生存しつづけ,患者の体内で感染源の1つとなる可能性があることを示した。ウィルスのTリンパ球との接着および破壊防止の研究は共同研究者服部らが行った研究で,以前彼等によって開発された抗ウィルスenv抗体をもちいてHIVウィルスの感染細胞との接着部位をしらべ,それがクニッツ型プロテア-ゼインヒビタ-であることをあきらかにし,また米国と共同研究を行って患者の治療や予防面での有効性を検討中である。
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