研究概要 |
臨床的に精神神経症状を呈したエイズ5例の神経病理学的検索を行い,症例1:HIV脳症(軽症),症例2:HIV脳症(中等症),サイトメガロウイルス脳炎,脳出血,空胞化脊髄症,症例3:トキソプラズマ脳炎,症例4:サイトガロウイルス脳炎,クリプトコッカス髄膜炎,症例5:サイチメガロウイルス脳炎,壊死性脊髄炎の診断を得た。2例のHIV脳症については,その程度より一例は初期例,もう一例は進行例と思われた。この2例のHIV脳症病変部位を含むホルマリン固定,パラフィン包埋切片に各種組織学的染色とともに,RCAー1,抗GFAP抗体,抗von Willebrand factor抗体,抗gp41抗体などを用いたABC法による免疫染色を行った。対照としては,2例の非神経疾患で急死した症例の同じ部位を用いた。 免疫組織化学的に検出される血管内皮細胞の質的な変化については,少なくとも光顕レベルでは大きな異常はないと思われた。単位面積あたりの血管数は,初期例でやや増加し進行例でやや減少する傾向が見られた。最も目立つ変化は,白質の小血管周囲を中心とする外膜への細胞浸潤と軽度の結合織の増加であった。初期例でも進行例でも血管とそのごく近傍の変化はあまり大差なく,違いはより周辺に広まっているかどうかの問題のように思われた。RCAー1を用いたレクチン染色は,マクロファ-ジ・ミクログリア系細胞の浸潤を明瞭に検出し,とくに初期病変の検索に有用であることが示された。 今後,この軽度ながら初期から存在する血管病変とHIVの侵入との相互関係を明かにするために,凍結標本とp24に対する抗体を加えて研究を進める予定である。
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