研究概要 |
MAIDSはマウスのレトロウィルスによって引きおこされる免疫不全症候群であり,AIDSと類似の症状を示す。我々は特にB細胞の多クロ-ン性活性化に着目し,その機序を解明することをめざした。C57BL/6マウスにLPーBM5マウス白血病ウィルスを感染させ,20週後にその血清中の免疫グロブリンを定量すると,5週目でIgMが約10倍となりその後しだいに減少した。一方IgAは20週後に著しく増加していた。これを裏づけるように表面にIgMを持つ細胞は,対照群56%に比して3%と1/10以下となり,逆にIgAを表面に持つ細胞は0.3%から5%へと10倍以上増加していた。我々はTGF_<ーβ>が表面IgA陰性細胞からIgA産生細胞への分化に関与していることを認めており,TGF_<ーβ>はIgA陽性細胞へのクラススイッチ因子として考えられる。そこでTGF_<ーβ>とB細胞増殖・分化因子として働くサイトカインのmRNAレベルを検討した。感染後20週の脾臓及びリンパ節からRNAを抽出し,逆転写酵素でcDNAとし,ILー2,ILー4,ILー5,ILー6,TGF_<ーβ>の各々のサイトカインに特異的なプライマ-の組み合わせを利用してPCRにより各々のmRNAレベルを検討してみたところ,脾臓,リンパ節共にTGF_<ーβ>mRNAの増加が認められた。またILーGmRNAの増加も認められた。従ってMAIDSにおけるIgA産生の増加はTGF_β産生の増加による可能性が示唆された。また我々は自己抗体産生に関与するといわれるCD5^+B細胞を欠くX染色体連鎖色疫不全マウス(C57BL/6xid)にLPーBM5を感染させ,多クロ-ン性免疫グロブリン産生が抑制されるかどうかを検討した。驚いたことにxidマウスはこのLPーBM5に感染せず,CD5^+B細胞がMAIDsウィルス自体の感染に重要な役割を果たしていることが予想された。CD5^+B細胞はILー5によって選択的に維持される細胞であり,MAIDSマウスにおいてはILー5受容溶発現細胞が消失していることも確認された。今後CD5^+B細胞のMAIDS感染と発症における役割を追求して,AIDSにおけるB細胞の役割について考察したいと思う。
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