研究概要 |
両生類胚における中胚葉誘導現象は,神経誘導に先だっておこり、個体の基本的体制の「形づくり」に最も重要な反応である。私達の研究室ではこのような現象をおこす中胚葉分化誘導物質として,世界で初めてアクチビンAを同定した。この物質は未分化な予定外胚葉に対して濃度依存的にすべての中胚葉組織を分化誘導することができる。低濃度(0.3〜1ng/ml)では腹側の血球や体腔内上皮を分化し,高濃度(10〜50ng/ml)では筋肉や脊索など背側の中胚葉を分化誘導する。このようにアクチビンAの濃度勾配によって腔体内の勾配を再現できたことは初めての結果である。またこの物質を胞胚腔中にマイクロインジェクションによって注入を行うと1個の卵あたり1〜3pg/mlで二次軸をもった胚を形成することができた。つぎにアクチビンに特異的に結合するタンパク質であるフオリスタチンを混合して未分化細胞に与えると,アクチビン1に対してフォリスタチン5の割合で完全にその分化誘導活性を抑制することが初めて明らかになった。このことは胚の中でのアクチビンの活性化を考える上で非常に重要なアプロ-チを可能にするものと考えられる。つぎにそれではツメガエルやイモリの卵内や胚内に実際にアクチビン物質が存在するのであろうか。私達はアクチビンのcーDNAをツメガエル肝の中からスクリ-ニングし,cーDNAライブラリ-をつくった。これらツメガエルのアクチビンプロ-ブを用いて初期胚の中でのmーRNA合成をノ-ザン法によって調べたところ検出されなかった。ところが,このアクチビン様タンパク質はすでに未受精卵の時からタンパク質の形として存在していることが初めて明らかになった。このことはアクチビンが未受精卵の中に不活性な型で存在し,胚発生という発生のプログラムの進行に伴って,しだいに植物半球側から活性化されてくると思われる。
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