研究概要 |
鳥類胚皮膚は背側に羽毛を,脚部に鱗を形成する。このような形の形成と異なるケラチン分化を誘導する因子を探索するのが本研究の目的である。昨年度までに,羽毛と鱗の部城特異的な誘導が,6,8日胚の羊膜外胚葉を反応系とし,6,8日胚の背側真皮と13〜15日胚の脚部真皮を誘導系として証明されたので,本年度は,両真皮に特異的な因子を追求した。誘導力が最もさかんになる7〜8日胚背側真皮と15日胚脚真皮をEDTA法により単離し,トリス塩酸バッファ-(pH9,0)中でウルトラソニケイトし,カラムTSKゲルDEAEー5PNを用い,HPLCで分画した。両真皮は時間的にも空間的にも全く異る部域に由来するにもかかわらず,得られた吸収曲線はよく一致していた。そこで1つ1つのピ-クを分取し,その各々を脱塩濃縮して10〜20%匂配のSDSーPAGEにかけた。その結果,多数の共通のポリペプチドバンドのほかに,背側真皮にあって脚部真皮にないもの25本(うち常に存在するもの7本),また,脚部真皮にあって背側真皮にないもの8本(うち常に存在するもの3本)のポリペプチドバンドを検出した。これらのバンドは分子量マ-カ-から18〜105KDaの分子量に相当する。これらのバンドが単一のポリペプチドである証拠は存在しないが,それぞれ部域特異的な誘導物質である可能性がある.SDSーPAGE上に展開されたこれらの部域特異的バンドを切り出し,これらを抗原としてモノクロン抗体をとりつつある。モノクロン抗体が得られれば,部域特異的か否か,その因子の発現と分布を直ちに明らかにする。また,これらのバンドの因子を老分化外胚葉に与えて培養し,羽毛または鱗の形態形成または部域特異的なタンパクの発現を調べる。
|