研究概要 |
筋収縮の原動力となる蛋白質構造の変化について2つの方向から実験的検討を加えた。スピンラベルマレイミド(MSL)ー軽鎖LC2をミオシン頭部に交換導入し、筋細胞を磁場と平行に置きESR測定した。筋細胞のアクチン線維に結合した頭部S1のラベルの向きは約66゚であった。双頭部HMMの場合は66゚と42゚で、一方の頭部の軽鎖は歪んでいる。硬直筋細胞内ミオシン軽鎖はサルコメア構造のため様々な方向に歪められていた。ミオシン頭部中心部にラベルを導入したときには向きは常に一定であるので、中心部と軽鎖(首部)の間に屈曲がおきやすい。しかしながら、キャビティに横穴をあけ硬直筋をくくった糸に荷重〜2kg重/cm^2をかけて引っ張っても方向がそろうことはなかった。弛緩状態のMSL軽鎖の向きはランダムで、頭部はアクチンから解離している。AMPPNP(低イオン強度)ではHMMと同様に66゚と42゚が観察され、頭部とS2がミオシンフィラメントから外れ、S2柔軟性のため軽鎖部への歪みが解消されるらしい。今後は張力発生中の実験を横穴式キャビティを用いATP還流して行う計画である。Gーアクチンは架橋剤MBSで処理すると塩存在下でも単量体で存在し(mーアクチン)、化学架橋アクチン二重体もMBS処理で重合が阻害される(dーアクチン)。mーアクチンはミオシン頭部当たり2個結合した。dーアクチンは頭部当たり1個結合した。ATPは結合を数倍だけ弱くする。その他の解析から、頭部には少なくとも3種類のアクチン結合部位があり、1番目はmー,dー,Fーアクチンを、2番目はm,Fを、3番目は少なくともATPを存在下でFを結合し、3番目へのFの結合は1、2番目の結合を著しく抑える。ミオシン頭部が複数のアクチン結合部位を巧みに変え歩行する分子模型が考えられる。非重合性アクチンはミオシンとの結合位置の電顕観察、S1との複合体の結晶化、溶液散乱実験に有用である。
|