研究概要 |
私共は本班会議で,アルツハイマ-病(AD)と進行性核上性麻痺(PSP)の線条体すなわち尾状核および被殻における大型神経細胞の選択的減少に関して報告してきた(Brain Res.411:205,1987.Brain Res.458:218,1988.Brain Res.504:354,1989.Brain Res.544:221,1991)。 今回これらの所見と比較する目的で,グアム島のパ-キンソン痴呆症(Guam PDC)の線条体を検索した。 <症例および方法>___ー: (1)1979年から1982年までグアム島で解剖されたGuam PDC50例の尾状核,被殻および側坐核をHE,KB,Bodian,Congo red,PAM染色および,抗ヒトτ抗体,抗βーpeptide抗体(井原康夫による),抗GFAP抗体免疫染色を施行し,光顕にて検索した。 (2)同上部位を電顕観察した。 (3)6例のKB染色標本を用いて,これまでと同じ方法により神経細胞の定量的検討を行い,その局在に関しても検討した。 <結果及び考察>___ー:Guam PDC線条体においては, (1)ADおよびPSPとほぼ同程度の大型神経細胞数の減少がみられ,ADと同様,それは側坐核でやや強い傾向が認められた。これに加えて小型神経細胞数の減少も認められた。 (2)残存神経細胞には神経原線維変化(NFT),curly fiberが認められ,電顕的にはpaired helical filaments(PHF)が多数認められた。従って,Guam PDC線条体神経細胞は,PHF,curly fiberを形成しつつ変性脱落してゆくもの,と考えられた。 (3)アミロイド沈着はほとんど認められず,少なくともGuam PDC線条体では,PHF,curly fiberは,アミロイドの存在なしに形成された可能性,が考えられた。
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