研究概要 |
1)トリソミ-16キメラマウス1匹を1年間観察したが行動上の異常は見られなかった。また、病理組織学的にも異常を認めず,βタンパクの蓄積も認めなかった。 2)トリンミ-16マウス胎児の大脳の一部を正常マウス第III脳室に移植し,2カ月および3カ月後に病理組織学的に観察した。その結果,正常同胞脳を移植したものとの間に有意の差は見られず,また,抗βタンパク抗体による免疫組織化学でも,それに反応する物質の蓄積を認めなかった。現在,小脳・脳幹を除く全脳らり分離した細胞を線状体に移植し長期観察中である。 3)昨年の本報告で、トリソミ-16マウス胎生15日前脳基底野ニュ-ロン培養系に神経成長因子(NGF)を添加した場合,コリンアセチルトランスフェレ-ン(ChA T)活性の上昇が対照より低いこと,しかし,全脳重量に対するNGF量はむしろ対照より高いことを報告した。このことは受容体レベルあるいは細胞内情報伝達レベルでの異常を示唆していると考えられるので,本年度はNGF受容体抗体を用いてNGF受容体陽性細胞を検討した。その結果,NGF受容体陽性細胞数はトリソミ-16マウスで有意に低いことが分かった。このことはトリソミ-16マウスにコリン作動系ニュ-ロンの一次性の異常が存在することを意味しており,コリン作動系ニュ-ロンの異常が指摘されているアルツハイマ-病との関連で興味ある結果である。
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