研究概要 |
神経伝達物質の開口放出にプロテインキナ-ゼC(PKC)が関与することが明らかにされてきた。PKCは分子生物学的解析により少なくとも7種類のサブタイプが存在し,これらのサブタイプは夫々活性化様式,基質特異性に特徴があり,明らかに組織,細胞局在を異にする発現特異性を示すので,細胞は夫々固有のPKCを介する細胞内情報伝達を担っているはずである。本研究は神経伝達物質の開口放出に関わるPKCサブタイプの検索を行ったものである。 モルモットの深部小脳核にはプルキンエ神経細胞からのγーアミノ酪酸(GABA)神経終末が分布している。その神経終末にγタイプのPKCが存在することが示されている。そこで,モルモット深部小脳核のスライス標本を用いてGABAの遊離を検討した。1.PKCを活性化するホルボ-ルエステルは高K^+により誘発されるCa^<2+>液依存性GABA遊離を増大したが,ウアバインによるCa^<2+>非依存性GABA遊離に影響しなかった。2.γタイプPKCを活性化するアラキドン酸はGABA遊離を惹起した。3.PKCを活性化しないメチルアラキドン酸はGABA遊離を惹起しなかった。4.アラキドン酸誘発GABA遊離はPKC拮抗物質のスフィンゴシン,ポリミキシンBによって抑制された。5.アラキドン酸代謝阻害物質のインドメタシン存在下にもアラキドン酸はGABA遊離を惹起した。6.γタイプPKCの存在が認められていないモルモット小腸の壁内GABA神経からのGABA遊離に対しては,アラキドン酸の遊離誘発作用がみられなかった。以上の結果から、γタイプのPKCが小脳プルキンエ神経細胞終末からのGABA遊離に関与することが明らかになった。今後,他の神経伝達物質の開口放出にどのようなサブタイプのPKCが関与しているかを解明する予定である。
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