研究概要 |
本年度の研究は,全体としては研究課題そのものの解明を目指したが,具体的には4つの方向から遂行した。 1.山田は近代の大阪・京都・神戸の大縮尺の地図類を収集し,そこからこれらの都市の近代化の特色を読み取った。その結果,最初の近代化の兆候は軍事面に現れたこと,明治末から昭和初期にかけての工業化の進展は著しかったこと,戦前段階では形態・機能両面で京阪神大都市圏は成立しておらず,せいぜい大阪と神戸の間のコナ-ベ-ションが若干進展しかかっていた程度にすぎなかったことなどを明らかにした。 2.藤井は,主に堺を対象とし,明治以降の都市化の進展を,地形条件との関係を軸として概観するとともに,太平洋戦争の戦災を受けて後の同市の都心部の変化について,詳細な検討を加えた。その成果の一端は,別記論文に掲載してある。 3.須原および香川は,住宅地化の進展をミクロなスケ-ルで把握・分析するための,パ-ソナルコンピュ-タによる処理システムの確立に今年度の主眼を置き,コンピュ-タ・プログラム10本を完成するとともに,それらを用いて,京都の南西郊地域の,大正末期から今日までの住宅地化についても,その実態を明らかにした。 4.青木は,本研究全体を通じて重要なテ-マとなるべき地域変化それ自体の理論的研究に従事し,対象とする地域のスケ-ルの違いに応じて,どのような研究方法や分析指標を用いるべきかという点に関して,他のメンバ-に示唆を与えた。 目下申請中の次年度の同一テ-マの研究課題が採択された場合には,今年度の各人の成果をさらに進展させるとともに,それらを統一的な都市化研究としてまとめることを最大の眼目とする所存である。
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