日本の工業化・都市化に伴なって、水利用体系は小規模分散型から大規模集中型へと大きく変化した。本研究の課題は水需要の地域的変化を全国的統計資料(工業統計・水道統計)の分析から把握することであり、全国と中四国地方を取り上げ考察した。土地利用と水需要を関係づけ、水利用を水収支に位置づけるために、特定の単位土地利用面積当りの水需要(水高)を指標としたが、その結果は以下のように要約される。 1. 工業用水需要は北九州から南関東に至る地域で激増したが、水供給は停滞、東京・大阪では減少した。工業用水原単位A(淡水使用量/敷地面積)は前述の地域を中心に増加傾向を示したが、原単位B(淡水補給量/敷地面積)には顕著な変化はなく、水利用の高度化と符号する。 2. 生活用水の需要は大都市に集中する。1985年都市用水原単位(取水量/給水面積)は東京・神奈川・京都・大阪で500mmを超えるほかは300mm以下であるが、この値は給水区域の人口密度と密接に関係する。 3 中四国地方の工業用水需要は高度成長期の鉄鋼・石油化学工業の発展によって激増したが、工業用水原単位A(淡水使用量)については顕著な時間的な変化はなく、用水型工業の集積が山口・愛媛などにみられる。原単位B(淡水補給量)は減少傾向を示し、特に岡山・広島・香川では小さな値を示し、回収率が増大し水利用の高度化が進んでいる。 4. 中四国地方の都市用水原単位は、1985年において県庁所在都市で300mm以上、小都市で100mm以上、町村で100mm以下が一般的である。その水源は、当初の表流水(自流)・伏流水から地下水・表流水(ダム)へ、さらに受水も瀬戸内地域で増大している。 5. 水田灌漑には1200〜1500mmが必要といわれているが、これと比較すれば工業用水の原単位Aは10^4〜10^5mm、10^3〜10^4mmのものが多い。都市用水原単位は10^2〜10^3mmが一般的である。
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