研究概要 |
ODAの実施に当って,開発途上国に先進国の技術を適用すると問題が生じやすく,適正技術の適用が重要である.本研究では,交通プロジェクトについて適正技術の条件を解明することを目的とする. 資金の流れは,政府開発援助,その他政府資金,民間資金の3種類があり,主に,政府開発援助としての円借款,開発調査,研修生受入れなどにより技術移転が行われる.技術移転という概念は国連のピアソン委員会,適正技術という言葉はT.N.シンにより使われ始めた.適正技術とは自立的な技術の維持・発展を可能とする準備段階の技術と考えた. 技術レベルには,総体的技術レベルと個別技術レベルがある.総体的レベルの指標として,高校就学率,人間開発指標,輸出構造などを考え,ロジスティック曲線で近似し,変曲点の位置などを比較した.総体的技術レベルについては,日本よりも数十年以上,個別技術レベルについては,10年以上遅れていると考えられる. 過去の技術協力の問題点の主要なものは,技術レベルの相違による不十分な技術移転効果,技術移転を受けた技術者が定着せず技術の伝承が行なわれないこと,資金不足によりプロジェクトが少なく技術を継続的に生かす場がないこと,現場の仕事を低くみるなどの習慣の違いなどによる技術移転の困難などである. 今後の,開発途上国に対する技術協力における適正技術とは,当該国の現状の技術レベルよりも少し上の技術を教育,訓練,適合化のための研究とセットで移転することであると考えられる.このとき,長期的,継続的にプロジェクトを実施するようにして,その中で技術移転を行なう必要もある.また,各種の統計,パ-ソントリップ調査などの基礎的調査に資金的,技術的に協力し,基礎的な関連技術の移転と基礎デ-タの集積を図ることも必要であろう.
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