研究概要 |
地球集積時に形成されたと考えられる珪酸塩を主とするプロトコアとその上に沈積した金属鉄に富んだ密度の高い層とさらにその上に存在するマグマオ-シャンと言った3層構造の力学的進化を追跡する事が本年の研究課題であった。これを軸対称の自己重力を持つ球の非圧縮粘性流体中におけるレイリ-・テイラ-不安定問題として捉え,これを数値シミュレ-ションで不安定構造がいかにして安定構造に推移していくかを調べた。この結果,まずプロトコア全体が一方向に浮きあがるタイプの運動(1次の運動)が起きた後,密度の高い層の一部がプロトコアの内へ沈み込むような(2次の運動)運動が起こる。全体の変形のタイムスケ-ルはこの2次のタイプの運動によって支配されている。この事はこれまでの線型理論で提晶されていた1次の運動がタイムスケ-ルを決めていると言う考えは単純化しすぎた議論であった事を明らかにしたものである。2次のパ-タ-ベ-ションは変形がすすむにつれて、高次への変形も引き起こし、タイムスケ-ルは徐々に長くなる。コア形成の最終段階では高次の変形(コア表層の不規則,小規模変動)が起こる様になり、プロトコアは金属質コアの表面にパッチ状に残る事になる。このような構造は現在話題になっているコアの凹凸の問題,ホットスポットの起源,始源的組成を持つガスの問題など多くの地球科学的問題と関連があるものと思われる。
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