研究概要 |
超原子価ヨウ素置換基の示す高い還元的脱離能を活用することにより、超原子価アルケニルヨウ素(III)化合物及びアルキニルヨウ素(III)化合物から、βースルホニルアルキリデンカルベンを発生させることに初めて成功した。アルキリデンカルベンがβ位にフェニルスルフェニル基やフェニルスルフィニル基を有する場合には、目的の分子内1,5ーCーH挿入反応よりもβ位硫黄置換基の1,2ー転位が一方的に優先してアルキニルスルフィドやアルキニルスルホキシドが生成する。ところが、βースルホニルアルキリデンカルベンの場合には、予測のとうり、その分子内CーH挿入による環化反応が1,2ー転位よりも優先し、5員環不飽和スルホン類の効率良い合成法となることを見出した。これは、スルフェニル基やスルフィニル基とは異なり、スルホニル基が硫黄原子上に孤立電子対を持たないために電子不足なカルベン中心を攻撃してイリド型中間体を形成することが不可能なためであると考えられる。本法を用いると、2ーsulfoleneや1,5ーOーH挿入反応によるジヒドロフラン類の合成も可能となる。 BF_3により活性化させた超原子価ヨウ素(III)化合物にプロパルギルトリメチルシランを作用させることにより、S_E2'反応により現在のところ全く未知の超原子価アレニルヨウ素(III)化合物を発生させることに成功すると共に、その[3,3]ーシグマトロピ-転位を経てオルト位選択的プロパルギル化が進行することを見出した。これはヨウ素が介在する初めてのクライゼン転位反応例である。
|