研究概要 |
当該年度は,自律分散システムにおける問題解決と学習の基盤となる要素技術について,特に,学習モデル及び協調モデルに重点をおいて,研究を展開した.得られた研究実績の概要は以下のとおりである. (1)演繹的学習モデル(EBL)と帰納的学習モデル(SBL)の融合モデルとしての拡張EBL EBLは知的エ-ジェントが例題からの汎化に基づいて自分がもつ領域知識を短練化することを可能とする知識主導型学習の枠組みであるが,領域知識が完全であること及び操作性規範と呼ばれるマクロ-ル生成のための強いバイアスを必要とする点において適用の範囲がこれまで限定されていた.本研究では,従来のEBLを複数例題下に拡張した拡張EBLを提案した.拡張EBLは論理プログラム上に形式化され,複数例題上の汎化からなる空間と操作性規範の関係について理論的に考察した.拡張EBLは,EBLとSBL(類似性に基づく学習)の自然な融合を与える枠組みになっている. (2)動的環境下でのエ-ジェント間の協調モデルについて 複数のエ-ジェントが役割を分担して問題解決を行う協調型問題解決システムでは,エ-ジェント間の協調の形態と協調を制御するための手段を確立することが必要である.本研究では,動的プランニング問題を対象として,垂直協調モデルと水平協調モデルの2つについて,解の最適性および協調のためのコストの観点から定性的な考察を行い,シミュレ-ションによってモデルの特性を明らかにした.さらに,自律分散システムとして自然な枠組みである水平協調モデルについては,環境の変化の程度に応じてエ-ジェントの間の協調を制御するためのパラメ-タを同定し,制御パラメ-タとシステムの特性の関係を明らかにした. 以上を要するに,当該年度の研究は,自律分散システムにおいて重要な概念である“エ-ジェントの学習"と“エ-ジェント間の協調協調"について有用なモデルを提案したものであり,当初の目的を達成したといえる.
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