研究概要 |
ソフトウェア設計過程の履歴を,ビデオやツ-ルを用いて記録し,それを分析するという実験的手法によって,人間の設計過程における思考活動に関して,以下のような成果を得た. 1.ビデオを用いた設計過程のモニタリングと分析手法の研究 被験者を2つのグル-プ(6人と5人)に分け,1つのグル-プには,自由な考え方で,思いつくままに,自然言語による仕様をそれぞれ作成してもらった.もう1つのグル-プは,得られた自然言語仕様(1つ選択した)から状態遷移図とデ-タフロ-図による形式仕様をそれぞれ作成してもらった.これらの作業過程をビデオに収録し,被験者の注目点の移動パタ-ンによって,各作業におけるPrimitiveな思考活動を表現した.さらに履歴中でよく見られたPrimitiveな思考活動の流れを抽出し,フロ-図で表現した.3種類(自然言語仕様作成,状態遷移図作成,デ-タフロ-図作成)のフロ-図を比較し,思考活動の流れに構造的な差異が見られることを確認した. 2.ツ-ルを用いたモニタリングと分析手法の研究 1で見られた作業の内,後戻り作業をより詳しく分析するために,操作がPrimitiveな思考活動に対応付けることができるような,ハイパ-テキストを基礎とするモニタリングツ-ルを作成した.4人の被験者に対し,作業履歴をとる実験を行ない,後戻り作業の抽出・分析を行なった.4つの後戻り作業パタ-ンがよく見られ,作業時間全体の6割以上の時間が後戻り作業に費やされていたことが判明した.また,実験結果より,このようなモニタリングツ-ルをベ-スとする仕様化・設計作業支援ツ-ルの検討を行なった.
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