研究概要 |
有限状態機械,デ-タフロ-マシン,オブジェクト指向システム,LOTOSなど,検証やプロトタイピングの可能な複数の抽象機械(複合機械)によって表現されるソフトウェアのメンタルモデルから設計に至る過程において,ソフトウェア技術者の実施する知的活動のプロセスがここでいうヒュ-マン・プロセスである.企業の大規模ソフトウェア生産の現場における経験の調査から,これはUW(unit workload)と称する単位プロセスの並行結合網で表わせることを確認した.本研究の成果によって,UWはプリ条件,プロセス・プログラム,ポスト条件,輸入仕様,輸出仕様,制約の組から成る表示的記述(denotation),およびこの表示を時間的,環境的制約のもとに解釈実行する反射記述(reflection)によっテ表明できることを知った. 複合機械は,シグネチャと等式からなる仕様で定義される等式仕様商代数によって,その始意味(initial semantics)を与えることができる.この方針に沿って,実務で作られる複合機械の記述経験を重ねている. ひとつのUW内におけるヒュ-マン・プロセスでは,輸入仕様に基づく仕様代数と輸出仕様に基づく仕様代数を与えられ,それをもとにこれらを包含する新たな仕様代数(第3の仕様)を生成する.これら3つの仕様間は準同形射(homomorphism)によって関連づけられる.第3の仕様を定義する仕様記述に含まれる等式記述が,輸入仕様と輸出仕様との間の関係,変更波及を形式的に定義しているものとみなすことができる. 以上に述べた基礎を基に,メンタルモデルおよびヒュ-マン・プロセスを支援する計算機環境(CASE)KyotoDBを試作している.KyotoDBでは上で述べたUWの表示的記述をひとつのオブジェクトとしている.反射記述は表示的記述オブジェクトをインスタンス変数とする複合オブジェクトとして記述される.
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