研究概要 |
1.高等植物において,ゲラニル二リン酸(GPP)はファルネシル二リン酸生合成の中間体として生成するとされ,GPP生合成酵素は存在しないとされていた。そこで,高等植物におけるC_<10ー>プレニル鎖延長過程の立体化学と構造の解明を計った。その結果, (1)ゼラニウム,ミカン,ハッカ,ツバキ,ポインセチア,クワ,タイサンボクおよびホウショウの粗酵素系を用いて,これら植物のGPP生合成能を調べ,生合成能の高かったゼラニウムとハッカからGPP生合成酵素を分画・精製した。これにより,GPP生合酵素がこれら高等植物に存在していることが実証された。 (2)また,ゼラニウムのGPP生合成酵素によるGPP生合成において,ジメチル二リン酸がイソペンテニル二リン酸に縮合する過程の縮合面と水素脱離の立体化学は,siーsi面付加,syn脱離の様式であることが明らかとなった。 2.ハッカおよびミカンにおいて,リモネン生合成酵素によって,非キラルなGPPが環化して種特異的に光学活性リモネンが生合成される過程のキラル発現機構の解明が計った。その結果, (1)ハッカの場合には(S)ーリナリル二リン酸(LPP)類似の絶対配置をもつリナリル型カチオン中間体が,ミカンの場合には(R)ーLPP類似のリナルリ型カチオン中間体が発生し,これがantiーendo型のコンホメ-ショオをもつ中間体を経て環化して,それぞれの種に特異的な絶対配置をもつリモネンが生成することが明らかになった。 (2)また,ハッカおよびミカンにおいて,4Sと4Rのリモネンが生合成されるいずれの場合にも,その8位二重結合の形成はGPPの10位メチル基からの位置選択的な水素脱離によっていることが実証された。
|