研究概要 |
平面衝撃波が衝撃波管内に設置された傾斜面上を過ぎると,衝撃波の斜め反射が起こる.特に表面が滑らかな固体であるとき,ある特殊な場合を除いて,一定の入射マッハ数および入射角に対して,反射角や反射形態は一意的に決まるというのが定説である.しかし粉塵などの多孔性媒質で覆われた斜面上における衝撃波の反射問題については1980年代に研究が始まったばかりで,現象は殆ど解明されていない.我々は数年来この問題に取り組んできたが,その過程で反射波の波面構造は非定常に変化すること,三重点近傍の流れ場は非一様であること,三重点の軌跡角は滑らかな斜面の場合に比べて小さくなること,そのため滑らかな斜面ではマッハ反射になる斜面傾斜角においても粉塵層の場合には正常反射になることもある.などの定性的な面について明らかにしてきた.しかしながら,粉塵の三次元性やその不規則的配置により反射波の内部構造は極めて複雑な様相を呈するため入射角,反射角および偏角などの定量的な諸物理量を得ることは極めて難しい.そこで本研究では,粉塵層がもつ表面粗さ,浸透性などを考慮した二次元モデル(溝付き板)を用いて,衝撃波の斜め反射に関する実験を行った.また,併せて粉塵層そのものや滑らかな斜面を用いた実験との比較も行った.それぞれについて入射角,反射角および流れの偏角等を実物投影機を用いて定量的に精密計測・解析した.その結果,滑らかな斜面の場合には定説通り三重点は直線上を運動し,流れ場の自己相似性が成り立っていたが,粉塵層と二次元モデルのいずれの場合においても非定常性が際だっていた.さらに,三重点の軌跡から測定した反射角・入射角の有効値は,従来の三衝撃波理論で予測される値から著しく逸脱し,斜面が滑らかではない場合には理論がそのまま適用できないことが判明した.
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