研究概要 |
本研究は、原子レベルまで制御された金属人工格子の電子状態を第一原理から計算し、個々の人工格子の電子構造を明らかにするとともに、その物性を電子レベルから理解しようとするものである。具体的には、局所電子密度近似法に基づき、ス-パ-セルの方法により、効率の良いLMTO法、必要に応じて精度の高いFLAPW法で計算する。本年度は、金属人工格子の重点領域研究の初年度でもあり、計算方法の確立、特に大きさが50〜100Aにおよぶ大きなス-パ-セルの電子構造を計算する場合の問題点を解決し、必要なプログラムの開発に重点を置いた。最近のワ-クステ-ションは能力的にも大型汎用機に匹敵するようになったので、本研究でもIBMのパワ-ステ-ションの最小システムを購入し、LMTO法のプログラムを移植し、セル中に50原子程度の計算が可能なシステムを開発した。現在進行中の具体的な計算の予備的な結果は以下の通りである。 (1)PtやPd上に蒸着した一層〜数層のCo薄膜の磁化は面に垂直で新しい磁性材料として注目を浴びている。この垂直磁気異方性の起源を解明するために、仮想的なPt_2Co,Pd_2Co,Au_2Co,Ag_2Co,Cu_2Coのスピン軌道相互作用を取り入れた強磁性状態の電子状態および全エネルギ-をセルフコンシステントにLMTO法で計算し、磁化のCo一原子当りの磁気異方性エネルギ-を求めると、Pt_2Coでは2.0meV,Pd_2Coでは1.0meVとバルクのCoに比べて1桁以上大きく、垂直磁化が非常に安定であることが分かった。貴金属の場合には、計算結果は微妙でAu,Cuでは磁化方向は 辛うじて垂直で、Agの場合には磁化方向は面に平行になるという結果が得られた。 (2)Yーn層,Gdーm層からなる金属人工格子[Y_nGd_m]_Mについても強磁性状態の電子構造の計算を行なった。
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