研究概要 |
金・3d遷移金属人工格子の内,本年度は主にAu/Ni人工格子の^<197>Auメスバウア-効果測定を行った。Au/Ni金属人工格子は積層周期が30Å以下になると,その弾性率が異常に大きくなる“ス-パ-モデュラス効果"を示すこと,又,積層周期の減少とともに強磁性体であるNi層の磁性はどのように変化するのか,非磁性であるAu層は厚さの減少とともにNi層の影響を受けてどのような磁性を示すようになるのか等,多くの興味ある現象が期待され,^<197>Auメスバウア-効果測定を種々の積層周期を有するAu/Ni人工格子を試料として測定した。測定に使用したAu/Ni人工格子試料は京大化研で作製されたものであり,250ÅのAu下地に53Å,30Å,10Åの積層周期を有するAu/Ni人工格子である。^<197>Auメスバウア-効果測定は196┫D2┣D1196Pt(N,δ)┣D197┫D1Pt反応により生成された白金金属膜中の┣D1197┫D1Ptをガンマ線源とし,人工格子をガンマ線吸収体として16Kにて行った。 ^<197>Ptの生成および測定は京大原子炉実験所にて行った。53A^^°周期試料による^<197>Auメスバウア-スペクトルは下地のAu層とAu人工格子内部層のAuによる通常のAu金属と同じアイソマ-シフト値を有する吸収線と重畳して異ったアイソマ-シフト値を示す成分が観測された。この成分はAu/Ni界面でのAu層によるものと考えられ,吸収線の面積から,界面から約2層のAuがNi層の影響を受けていることが判明した。30A^^°周期の人工格子ではそれらの成分が増大すること,10A^^°周期の人工格子では人工格子中のすべてのAuが純Au金属状態とは異ったアイソマ-シフト値を示し,Ni層の影響を受けて磁気分裂した成分になっていることが判明した。吸収面積をAu下地からの寄与と比較することによって,10A^^°人工格子中のAu原子のデバイワ-ラ-因子はBulk値のそれよりも1.4倍も大きいことが判明し,デバイワ-ラ-因子からス-パ-モデュラス効果を検証することができた。
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