研究概要 |
本年度はまず、同一の刺激と時間のパラメ-タのもとで、作業記憶課題と参照記憶課題を順次、しかも同じユニットの記録が可能な短期間のうちに移行させる方法について行動分析的に検討した。被験体は雄のアルビノラット10匹、装置はペレットを強化子としたパネル押しのオペラント箱、刺激は高低2種類(10kHz,2kHz)の純音を用いた。まず作業記憶課題(継時的遅延非見本合わせ課題)では、直前の試行と同じ音の試行(match)ではパネルを押さず(NoーGo)、異なる音の試行(nonmatch)ではパネルを押す(Go)よう訓練した。1セッション150試行、非対称性強化、などにより、全てのラットが課題を学習するまで訓練した後、参照記憶課題(継時的弁別課題)の訓練に移った。装置及び刺激と時間のパラメ-タは先の作業記憶課題と同一であるが、高音にはGoを、低音にはNoーGoを常に行うように訓練した。その結果、この課題の学習に要した全ラットの平均セッション数は3.6(SD=1.65)であり、再び作業記憶課題に移行すると、その学習には平均2.7(SD=1.56)セッション要した。その後さらに、参照記憶課題→作業記憶課題、と順次移行させたところ、それぞれ平均1.8(SD=0.59)と1.3(SD=0.48)セッションで学習できた。これらの結果は、同一の刺激と時間のパラメ-タのもとで、作業記憶課題→参照記憶課題、の学習が約3セッションで可能であり、その期間を通じての同一ユニットの記録も十分可能であることを示している。次に、課題遂行中の複数ユニットの安定した同時記録の方法について検討した。その結果、自作マイクロドライブに取り付けた差導増幅用ワイヤ-により、複数のユニットを海馬CA1,CA3,聴覚皮質などから安定して検出できた。現在、作業記憶課題の遂行→参照記憶課題の学習と遂行、をとおしての記録と解析を行っている。
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