研究概要 |
我々が単離したAbelsonマウス白血病ウイルス由来温度感受性変異株を用いたトランスフォ-メ-ションにより、胎児胸腺よりThyー1^ー/Scaー1^+/ILー2R^+の表現型を示す幼若造血細胞5,6,12,19,33,42を、またThyー1^+/Scaー1^+/ILー2R^+の表現型を示すクロ-ンC1、C10ー7を単離した。33,42はILー1の刺激により形態学的にマクロファ-ジへ、更に6,33,42は胎児胸腺組織培養により形態学的にマスト細胞へ分化した。19はマクロファ-ジのみに分化した。C1およびC10ー7はILー1の刺激によりマクロファ-ジへ分化し、アクセサリ-細胞を除去した T細胞の増殖をConAの存在下および非存在下で増殖を支持することが明かとなった。これらのクロ-ンにおける他の系への分化能をサイトカインあるいは造血支持細胞存在下での実験系で検討したが、リンパ球、白血球系への分化は認められなかった。一方分化前のC10ー7細胞表面抗原に対するモノクロナ-ル抗体3F7ーA1,3A9ーD1を作製し、抗原の性状およびこの抗原を発現する細胞の性状および動態を確認したところ、成熟組織ではBリンパ球系の細胞にこの抗原が選択的に発現され、また3F7ーA1抗原発現に関して、B細胞発生の過程で幼若B細胞は抗原陽性と陰性の2つの亜集団に分別されることが示唆された。一方胎生初期胸腺にはこれらの抗原を発現する細胞は高頻度に存在するものの、成熟胸腺では殆ど認められない。また数回の実験に関して特に胎児組織では、胎生につれて3F7ーA1抗原の発現が複雑に変動することが示唆され、今後更にその発現意義を詳細に検討する必要性が認められた。3F7ーA1および3A9ーD1抗原はそれぞれ50ー60kdおよび40kdの蛋白質分子を認識することが示唆されており、また各組織における発現様式により新しい造血細胞表面抗原であると考えられる。
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