研究概要 |
対数増殖期(L期)のマウスFM3A細胞から調製したS100は,in vitro rDNA転写活性を有するが,定常期(S期)からのS100には転写活性がない。これが何に起因するのかを、リン酸セルロ-スカラムクロマトによりS100を分画化し再構成実験により調べた結果、RNAポリメラ-ゼI(polI)を含むTFIC画分の活性の有無によることが分かった。 S100をNAD^+と前処理することにより,S期S100によるrDNA転写活性が著しく回復し,一方L期S100に対してはむしろ抑制的に働くことを見い出した。このNAD^+の作用は,ポリADPーリボシル化酵素に対する特異的阻害剤である3ーアミノベンズアミド(3AB)および抗polI抗体を用いた解析から,polIの195Kdaの最大サブユニットをモノADPーリボシル化することにより活性型とし,一方ポリADPーリボシル化することにより不活性型とすることが示唆された。 ^<32>PーNADにより修飾されたpolIの195Kdaおよび130KdaのバンドをSDSーPAGE後のゲルから抽出し,ホスホジエステラ-ゼ処理後PEI薄層クロマトにより解析した結果から,タンパクが実際にADPーリボシル化されていることが確認された。 また,S100タンパクをSDSーPAGEで展開後,ウエスタンブロット法によりニトロセルロ-スに転移し, ^<32>PーNADとインキユベ-トすることによりタンパクがラベルされるかどうかを調べた。その結果, ^<32>PーNADだけの存在ではフィルタ-上のタンパクは修飾されないが,S100を添加することにより,195Kおよび130Kdaのバンドがラベルされた。このことから,タンパクのラベルは単なるNAD^+の結合ではなく,酵素的に修飾されることが明らかとなった。 以上のことから,polIのADPーリボシル化による修飾化反応が,マウスrDNAの転写調節に関与していることが強く示唆された。
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