研究概要 |
スフィンゴ糖脂質の構造と機能との関係を分子レベルで研究するために、「化学変換法」によるスフィンゴ糖脂質の化学合成について研究してきた。出発物質としてヒト赤血球膜中の主要糖脂質であるグロボシドを用いた。実際には、まずそのモデル物質としてベンジルβーラクトシドについて水酸基の選択的保護法およびグリコシル化の最適反応条件を確立し、その結果を糖脂質に適用するというアプロ-チをとった。 その結果、グロボシドの末端にNーアセチルガラクトサミン残基の3,4位がイソプリデン化されたグロボシド誘導体(収率68%)がほぼ選択的に生成する条件が見い出された。イソプロピリデン基の結合位置は、生成物のアセチル体とグロボシドの完全アセチル体のNMRデ-タとの比較により決定した。次に、常法に従ってベンジル化、脱イソプロピリデン化を行ない、末端Nーアセチルガラクトサミン残基の3,4位の水酸基だけがフリ-の「ベンジルグロボシド糖受容体」へと変換した。この糖受容体にNーアセルチガラクトサミンまたはガラクト-ス残基を位置・アノマ-選択的に導入することにより、フォルスマン抗原、パラフォルンマン抗原、SSEAー3抗原などのグロボ系列糖脂質を合成することができる。目下、それぞれのグリコシル化反応を検討中である。 一方、糖質の選択的イソプロピリデン化と糖脂質を構成するオリゴ糖の簡便な合成法を開発した。すなわち、ガラクト-ス、Nーアセチルグリコサミン、クラト-スなどをイソプロピリデン化することにより水酸基が1または2個だけフリ-の直鎖状糖誘導体を高収率で得た。それぞれの生成物について、αーフコシル化反応を行いガラクト-スからは2ーαーLーFucosylgalactoseを合成する最短ル-トを開発した。また、クラト-スからは、2',6'ーDiーαーLーFucosyllactoseおよび2'ーαーLーFucosyllactoseを合成した。さらに、糖脂質を構成するオリゴ糖の合成に拡張中である。 第3に、Nーアセチルヘキソサミンの簡便なグリコシド化法を開発した。すなわち、Pyridinium pーtolueneーsulphonateまたはtriflateを触媒として、アミノ酸の完全アセチル体とアルコ-ル類または二糖性糖受容体との反応により相当するアルキルβーグリコシドおよび三糖類を高収率で生成する条件を見い出した。この方法によりAminoCTHおよびアシアロGM2などの糖脂質を構成する三糖類を合成した(この結果は、XIth International Synposium on Glycoconjugates,1991,Torontoで発表予定)。
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