研究概要 |
高等植物の液胞膜に局在する2種のプロトンポンプ、すなわちATPaseと無機ピロリン酸ピロホスファタ-ゼ(H^+ーPPase)について、ヤエナリを材料にタンパク質分子レベルおよび酵素学的解析を進め、いくつかの重要な知見を得た。 【ピロホスファタ-ゼ】 H^+ーPPaseは分子サイズ73kDaの単一のタンパク質で構成されている。実際には73Kタンパク質のホモ二量体が具体的な機能単位である。酵素の高次構造の安定化にはMg^<2+>の存在が不可欠であり、さらに酵素機能の活性化にも不可欠である。したがってH^+ーPPaseはMg^<2+>を必須要素とする金属酵素といえる。一方、Ca^<2+>はPPase対して強い阻害作用を示す。これは反応溶液中でCaPPi複合体を形成され、これが基質(MgPPi)結合部位に高い親和性をもつためである(K___ーi,17μM)。液胞膜H^+ーPPase他の可溶性PPaseあるいは動物ミトコンドリア、光合成細菌の膜結合型PPaseとは、酵素学的性質に共通点があるもののタンパク質としては異種分子であることも明らかにした。また、植物生理学的視点での解析により、PPaseおよびATPaseは胚軸の細胞分裂直後に成熟細胞の酵素量の20〜30%が合成され、その後細胞伸長に伴い膜脂質と同速度で合成・供給されることが明らかになった。 【プロトン輸送性ATPase】 植物細胞には細胞膜,ミトコンドリア、葉緑体そして液胞の4種のH^+ATPaseが存在し、その中の液胞ATPaseを対象とした。ヤエナリの液胞膜ATPaseは9種(分子サイズ、68,57,44,38,37,32,16,1,12kDa)の異種タンパク質分子の集合体であり、このうち16Kサブユニットはプロトンチャンネルを、他の8種のサブユニットは膜から露出した親水性部位形成している。N末端側のアミノ酸配列から68Kは動植物、古細菌に共通な触媒サブユニットであることも明らかにした。
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