研究概要 |
土壌細菌の一種である毛根病菌<agrobacterium>___ー <rhizogenes>___ーのRiプラスミドを薬用人参(オタネニンジン<Panax>___ー <ginseng>___ー)に導入して分離した形質転換体(毛状根)を用いて、我々の研究室で以前より幅広く行っている変換反応による物質代謝能について検討した。 薬用人参の毛状根に強心配糖体ジギリキシンのアグリコンであるジギトキシゲニンを投与して培養後,変換物を単離して構造を明らかにした。その結果,主変換物は3位の水酸基にグルコ-スが結合した3ーβーDーグルコサイドで,ついでそのグルコ-スの2位にもう1分子のグルコ-ス,すなわちソホロサイドが結合した2糖配糖体や3位の水酸基がエピメリ化した化合物,そのグルコサイド,さらにグルコ-スの6位にもう1分子のグルコ-ス,すなわちゲンチオビオ-スが結合した2糖配糖体,3ーβーグルコサイドのマロニル体,あるいはジギトキシゲニンの5ーOH体,そしてその3ーグルコサイド等,現在までに13種の変換物が単離された。このうち3ーソホロサイドやマロニル体,3ーエピゲンチオビオサイド,さらに3位のステアリン酸,パルミチン酸,ミリスチン酸,ラウリン酸のエステル体は薬用人参に特有の変換物である。ゲンチオビオ-スとソホロ-スは共に薬用人参のサポニン成分の構成糖である。さらに3ーβーマロニルグルコサイドも新物質であり,薬用人参のサポニンの構成成分として認められているものである。 つぎに、2ーフェニルプロピオン酸についても同様に変換反応を行った結果、ジギトキシゲニン同様,サポニンの構成糖、プリメベロ-スが結合した新しい化合物の変換が確認された。 今後は、さらに他の化合物に対する各培養組織の間での変換活性の比較を行い、代謝能力の相異を明らかにする予定である。
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