研究概要 |
シロイヌナズナを材料に乾燥及びABAで誘導される遺伝子群のクロ-ニングを行いその機能と各遺伝子のABAによる発現制御の分子機構を明らかにすることを目的とする。さらに種子の成熟期における組織特異的、時期特異的発現の制御機構と乾燥時の組織非特異的な誘導機構におけるABAの機能可変性の分子機構について解析することを目的としている。 乾燥処理後10時間で誘導されるmRNAのcDNAライブラリ-を作成した。ディファレンシャルスクリ-ニングにより乾燥処理によって誘導されるcDNAクロ-ン約20個を得た。これらのcDNAクロ-ンをcRD(Responsive to Desiccation)と命名した。クロスハイブリダイゼ-ションにより現在9種に分類された。cRDクロ-ンの塩基配列の解析の結果、cRD22はソラマメで報告された種子形成期の初期から中期に大量に転写される機能の不明なタンパク質(USP)と相同性があること、cRD21とcRD19は種類の異なるthiol proteaseであること、さらにcRD28は膜タンパクの構造を持ち、nodulinの一種でバクテロイドの膜タンパク質nodulin26やレンズ繊維のgap junctionを構成する膜タンパク質MIPと部分的に相同性があることが示された。cRD29,cRD20,cRD26は現在のところ機能は不明である。cRD17,cRD2に関しては塩基配列を解析中である。 cRDクロ-ンに関してABAによる誘導に関して解析した結果、cRD22とcRD29は誘導されるのに対し、cRD21,19は外から加えたABAによって誘導されないことが示された。またいずれのクロ-ンも低温処理によっても誘導されることが示された。cRD22,21,19に関しては遺伝子クロ-ンも得ており転写開始領域の解析を行った。その結果後述するようにABAによる誘導に関与すると考えられているシスエレメントはABAで誘導されるcRD22には存在することが示された。
|