研究概要 |
1.腫瘍におけるがん関連遺伝子の活性化. (1).脳腫瘍におけるEGFRの質的・量的活性化. 我々は多形膠芽腫においては正常型EGFRのみならず,リガンド結合ドメイン内部の欠失変異を伴う異常なEGFRの遺伝子増幅がしばしば見られることを報告してきた。今回,ゲノム上の変異部位を明らかにし,またNIH3T3細胞に対してリガンド非依存性に中間的なトランスフォ-ミング活性を示すことを観察した。 (2).赤芽球系白血病における膜糖タンパク・マウスCD43の異常発現フレンドマウス赤芽球症において,単クロ-ン性の造腫瘍性細胞(MEL)で活性化される遺伝子をdifferential hybridization法により調べ,ヒトCD43遺伝子に極めて類似したマウス遺伝子がDNAレベルで増幅し,RNAレベルでも異常発現することを見出した。他のMELにおいては,同遺伝子のDNA再構成による活性化が見られた。抗体を作成し,タンパク質レベルでも異常発現を確認した。予想されるタンパク質はキナ-ゼドメインをもたない膜糖タンパク質で,このタイプの遺伝子の活性化は我々の報告が初めてと思われる。 2.細胞周期(減数分裂)に関与する新しいキナ-ゼの単離. 細胞周期に密接に関与し,cdc2/cdc28に構造的類似性を有する新しいプロティンキナ-ゼ遺伝子を単離した。この遺伝子は精巣のパキテン期を中心とする減数分裂期の細胞に特異的に発現することが種々の解析により明らかとなり,<mak>___ーと名付けた。さらに,合成ペプチドに対する特異的な抗体の作成に成功し,約60〜66kDaの2種類のタンパク質が合成されることを見出した。今後,機能面の解析を推進したい。
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