研究概要 |
ras遺伝子は1塩基の点突然変異によって活性化を受ける。このためこの領域を含む部分をRTーPCR法によって増幅し、オリゴヌクレオチド・プロ-ブを用いてDifferential hybridizationを行った。その結果,MDS症例90例中13例にNーras遺伝子の活性化が検出され,その後の経過観察の結果,この13例中11例が白血病へ移行した。ras遺伝子が正常であった例で経過を追うことのできたMDS症例においては白血化がほとんど見られないことから,ras遺伝子の活性化はMDSの白血化に対する重要な予後判定因子であると結論された。 Ph^1陽性CMLおよびPh^1陽性ALLにおけるt(9;22)におけるBCR遺伝子上の切断点を検討するため、検体よりRNAを抽出しRTーPCR法を用いて解析を行った。Ph^1陽性CMLにおいては全例でMーbcr領域に切断点が検出されたが、Ph^1陽性ALLではMーbcrとmーbcr領域に切断点を持つものがおよそ半数ずつ存在した。またCML急性転化例5例のうち3例では切断点がMーbcr領域の両方に観察された。うち1例では急性期にmーbcr型の切断も出現し,治療後に消失した。以上の結果から,mーbcr型BCR/ABL遺伝子と急性転化の関連が示唆された。 p53遺伝子は大腸癌などでその変異が解析されており,変異部位は500bpの範囲にわたっている。このためRTーPCR法とSSCP法を用いて変異の有無を解析した。解析の結果,50例の白血病症例中4例にp53遺伝子の変異が予想された。これらのcDNAの塩基配列を決定した結果いずれも片方のアレルの変異と他方のアレルでのp53mRNAの欠損が明らかになった。この結果から,これらの症例においては両方のアレルでp53遺伝子が不活化され,この不活化が白血病の発症に寄与している可能性が考えられた。
|