研究概要 |
rhoがん遺伝子はrasがん遺伝子の類似遺伝子で、その産物はrasp21と同じ低分子量のGTP結合蛋白質である。我々は、数年前ボツリヌス菌由来のADPリボシル化酵素がこの蛋白を特異的に修飾することを見出した。本研究はこのことを利用してrho遺伝子産物の細胞内機能を同定することを目的としている。本年度はこのため以下の実験を行った。 1.ボツリヌス菌ADPリボシル化酵素の同定と同酵素遺伝子のクロ-ニング: C型ボツリヌス菌003ー9株より分子量25kのADPリボシル化酵素を単離精製した。その酵素(C_3と称する)の抗体を作製し、C_1毒素標品中の酵素活性がC_3酵素に由来することを明らかにした。また、精製蛋白の部分アミノ酸配列を同定し、これを用いてこの酵素の遺伝子クロ-ニングを行った。現在、得たクロンをもとに塩基配列を決定中である。 2.ボツリヌス酵素O_3を用いたrho遺伝子産物の細胞内機能の解析。 Vero,LLCーMK_2,PCー12,GOTO,3T3などの培養細胞の培養液に精製C_3酵素を添加、又は、これらの細胞中に微量注入しその反応を観察した。これにより細胞内のrho産物がADPリボシル化されるにつれ、これら細胞に円形化や突起形成などのPhenotypeの変化がおき、増殖が抑制されることが明らかとなった。このことは、ADPリボシル化がrho産物の情報伝達経路に対して影響をもつことを示したものである。現在その詳細を検討中である。 3.rho産物に特異的なGTPase活性化蛋白(rhoーGAP)の精製 ウシ副腎細胞上清を材料にrhoーGAPの精製を行った。精製は硫安分画、フェニルヤファロ-ス、CMーセファロ-ス、TSKゲル、モノSの各クロマトで行った。精製倍率は36000倍、収率は0.6%であった。最終標品は分子景28kに単一の蛋白バンドを呈した。ゲル濾過などの挙動を併せrhoーGAPが28kDaの単純蛋白であることが明らかとなった。
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