研究概要 |
本研究の目的は,免疫系担当細胞の発生・分化におけるILー5の役割を見きわめ,ILー5受容体遺伝子を単離することによりILー5受容体の構成を明らかとし,ILー5受容体の種々の細胞における発現を検索することにある。 1.まず長期骨髄細胞培養法を用いてILー5は好酸球の増殖とCD5(Ly1)陽性B前駆細胞の維持に有効であることを見い出した。また同時にこの培養によりT88ーMとY16という2つのILー5反応性の細胞株を樹立した。共に約10,000個の低親和性受容体(解離定数:K_D約5nM)と約1,000個の高親和性受容体(K_D約20pM)を有していた。2. ^<35>S標識ILー5を用いた化学架橋実験より,低親和性受容体は分子量約60,000の分子より,高親和性受容体はさらに分子量130,000の分子が結合してヘテロダイマ-を形成することにより構築されていると予想されている。(1)本実験ではこの分子量約60,000の分子を免疫沈降させる2つの抗体H7とT21と発現ベクタ-CDM8を用いてこの分子をコ-ドするCDNA,pILー5R.8を単離した。このcDNAをCOS7細胞で発現させることにより,この遺伝子が分子量約60,000の低親和性ILー5受容体をコ-ドしていることが示された。またこの遺伝子は親株以外にCD5^+の慢性B白血病細胞株BCL_1,またIgM産生ミエロ-マMOPC104Eで発現が認められ,mRNAのサイズは5.8kbおよび5.0kbの2種類であった。(2)また我々はT88ーM細胞3×10^<11>個よりH7結合ゲルを用いて分子量約60,000の分子を精製しそのN端17個のアミノ酸配列を決定した。その配列はcDNAから予想される18番目のアミノ酸残基から17個目までのアミノ酸残基に相当しており,cDNAはH7抗体の認識する分子をコ-ドすることが確認された。3.正常マウスの腹腔B細胞のほとんどがH7抗原を持っており,その70%以上がCD5陽性であった。この他骨髄および脾臓の一部の細胞にH7抗原の発現が認められる。今後造血分化におけるILー5受容体の発現調節を検討する予定である。
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