研究概要 |
キラ-T細胞(CTL)による自家癌特異的破壊の分子レベルの解析は、癌免疫の究極の目的である。癌の免疫療法は特異的な免疫反応に基づかなければ,いかなる手段も一時的に終わり,永続性のない険性がある。今年度は自家癌特異的CTLクロ-ンと標的癌細胞のペアを新たに,HSTー2(胃癌),HOT(卵巣癌),PUN(原発不明),TOCー2(卵巣癌)の4つの系を確立し、この各々のペアにつき、細胞障害機構を解析した。今年度は更に、PCRを利用したTcell receptor(TCR)のVα,Vβ gene usageの解析を行った。その結果,HSTー2系についてはCD3+、CD8+のCTLが自家癌選択的な細胞障害を示し、Vα7or Vα12、Vβ20のTCR usageが確認された。また、HSTー2をBrefeldinAで処理することにより、細胞障害活性は完全に消失した。現在,HSTー2のどのような抗原分子がMHCと会合しているのか研究している。この物質は、ヒト癌抗原の本質的分子であり、強い興味をもたせてくれるものである。また一方で、標的抗原に対する単クロ-ン抗体(mAb)を作製し、そのいくつかが、細胞障害を強く抑制した。これらは少なくとも1CAMー1やLFAー3などとは異なるものであった。ごく最近,MHCーgrooveの外側に存在する抗原の存在も明らかにされ、これらmAbにより認識される分子の本態が注目される。我々は昨年確立した別な胃癌の系SSTWのCTL TCRの解析も行った。その結果,Vα7orVα8,Vβ2orVβ6のusageが証明された。HSTー2も、SSTWも同じ印環細胞癌であるが,TCRαβのVregion usageは明らかに異なっていた。また,HOT系については,CD4ー,CD8のrδ型CTLが誘導された。しかも,heat shock proteinのあるファミリ-がこの障害に関っている可能性も得た。現在さらにより多くのペアの確立に努めている。これら各々の系のTCR usageの分析や癌抗原の本態を分析し,よりパワフルな免疫療法の基礎の確立を目指している。
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