研究分担者 |
佐藤 雅彦 北里大学, 薬学部・学振, 特別研究員(が
田中 聡子 北里大学, 薬学部, 助手 (40188313)
姫野 誠一郎 北里大学, 薬学部, 助手 (20181117)
瀬子 義幸 北里大学, 薬学部, 講師 (60133360)
永沼 章 北里大学, 薬学部, 助教授 (80155952)
|
研究概要 |
1.メタロチオネインの合成誘導が制癌剤や放射線の副作用軽減に有効なことを既に明らかにしたが,この事実はメタロチオネインを高濃度に含有する癌細胞が制癌剤や放射線に対して耐性を示す可能性のあることを示唆している.そこで担癌マウスを用いて,癌組織中のメタロチオネイン濃度と各種制癌剤の抗腫瘍活性との関係を検討した.その結果,メタロチオネイン合成誘導剤である亜鉛の前投与によってシスプラチン,アドリアマイシン,シクロフォスファミド及びメルファランの抗腫瘍効果が著しく抑制されることが判明した.また別の検討により,担癌マウスに制癌剤を投与することによって癌組織中のメタロチオネイン濃度が有意に増加することも明らかとなった.この結果は,制癌剤の投与そのものによって癌組織が多くの制癌剤に対して耐性を獲得する可能性を示している. 2.癌以外の正常組織中でメタロチオネインの合成を促進させると制癌剤の抗腫瘍活性を損なうことなく副作用のみを選択的に軽減することが出来る.この正常組織でのメタロチオネイン合成誘導が制癌剤による2次発癌の抑制にも有効である可能性がある.そこで制癌剤をマウスに投与した際の腫瘍形成率及び自然発生癌の生成率に対するメタロチオネイン合成誘導剤併用の影響を検討した.その結果,シスプラチン及びメルファランによる肺癌の発生率が亜鉛の前投与によって有意に減少した.また,制癌剤を投与していないマウスに肺癌の自然発生が観察されたが,亜鉛の前投与はこの自然発癌をも完全に抑制した.このことからメタロチオネインは制癌剤など化学物質による発癌を比較的効率が良く抑制すると考えられる.
|