研究課題/領域番号 |
02301066
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研究種目 |
総合研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
独語・独文学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柴田 翔 東京大学, 文学部, 教授 (00011312)
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研究分担者 |
土合 文夫 東京女子大学, 文理学部, 助教授 (60114576)
清水 本裕 東京農工大学, 一般教育部, 助教授 (80139485)
谷川 道子 東京外国語大学, 外国語学部, 助教授 (50038501)
浅井 健二郎 東京大学, 文学部, 助教授 (30092117)
池内 紀 東京大学, 文学部, 教授 (70083277)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
7,800千円 (直接経費: 7,800千円)
1991年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1990年度: 4,800千円 (直接経費: 4,800千円)
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キーワード | ドイツ文学 / 女性論 / 女性像 / 男性原理 / 女性論・女性像 / 寓意(アレゴリ-) / 象徴(シンボル) / 近代イデオロギ- / ロマン派 / 母権 / モ-ド / 文学 |
研究概要 |
ヨ-ロッパ近代は、人間の平等を謳ったにもかかわらず、男性原理という抑圧装置を強固に作動させ続けることによって、女性を社会的・文化的な弱者の位置に押し付け貶めてきた。それと同時に近代の文学・芸術は、その担い手の圧倒的多数が男性であったが、おしなべて女性を理想化し、美的形象として描き続けてきた。この「美的形象としての女性像」に焦点を当てるとき、この時代が孕んでいた二重の矛盾が浮かび上がってくる。ヨ-ロッパ近代を、このような矛盾の歴史として、かつまたこの矛盾の意識化の歴史として捉えることが、本研究の基本的な枠組みを形成している。 美的女性形象を生み出す表現意識の根底には、男性原理システムが抱くエロス的な欲望があり、その中にはユ-トピア的志向性・願望を認めることができる。しかしそれは、市民的個人の代表者として自己正当化と自己保存をはるか男性原理が、自らの完全な自己実現や救済を希求するという意味での〈ユ-トピア性〉であり、美的女性形象はこのようにして構想されたユ-トピア的世界秩序の内部に、「包容者」として配置されるのである。ボ-ドレ-ルに始まるモデルネの反乱は、この美的女性形象の破壊を意味すると同時に、対象美の意識から表現媒質美の意識への移行を意味している。しかし、この移行の時点に至ってもなお美意識を規定する男性原理システムへの批判が開始された訳ではなかった。この批判は、目下進行中の男性原理主導文化への全般的な見直しの中で初めて可能になったといえる。 このような観点から18世紀以降のドイツ文学に現れる女性像を、各時代に特有の女性論との関連で解読するとき、ヨ-ロッパ近代の美意識と文化構造の歴史的転換のメカニズムを解明する新たな視野が獲得されるのである。
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