研究概要 |
喘息発作死が世界的に増加が指摘される中で,本邦の喘息死の特徴について平成2年度報告で(1)頻度が増加傾向,あるいは横ばい状態である,(2)年令は50才60才,70才代の順で,男性に多い,(3)発作開始後1時間以内に死亡する急死が経年的に増加している,(4)喘息のタイプでは慢性型,感染型,混合型,重症者に多いが,軽中等症の割合が高くなっている,(5)死亡の誘因として,殆んど明確ではないが感冒肺炎など気道感染の占める割合が高い,(6)患者,家族に喘息に関する知識が低いのでこれに伴う受診率の低下や服薬の不充分治療全体の遅れがあることなどを指摘した。平成3年度では追加症例を含め上記諸事項の確認および急増しつゝある急死症例につき,その病態把握を全体死群との比較で試みた。対象症例は発作死全体群357例,急死群145例で昭和62年〜平成1年までに死亡した症例である。結果(1)急死群は全体死の中,1980年までは10〜15%であったのが1981年以後は20%を超え,今回は40.6%とその増加が著明であった。(2)性別では男性に多く,年令別では全体死群と差はみられないが,そのピ-クが若年層にシフトする傾向であった。(3)重症度では2群間に差はみられなかった。(4)喘息のタイプでは慢性型重症型,慢性型中等症,発作型中等症が各々42.7%,25.3%,15.7%と多くみられた。アトピ-,感染型の分類ではアトピ-型の占める割合の増加がみられた。(5)死亡場所は、家庭内,搬送車内での急死が多くDeath on Arrival(病院に到着時すでに死亡)の症例が多くみられた。(6)過去に大発作で入院,挿管の既往をもつ人が急死群に多かった。透因として感染の他,アスピリン服用,過労も多くみられた。(7)薬剤投与の薬などでは2群間に差はみられなかった。(8)その他,患者,家族に対するオリエンテ-ション不足,薬剤の使用の問題救急体制の不足,医療機関の相互連絡の不足などがあり,急死の予防に示唆を与える成績を考えられた。
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