研究分担者 |
佐々木 脩 秋田県立農業短期大学, 助教授 (80073972)
岡田 幸助 岩手大学, 農学部, 助教授 (50002077)
首藤 文栄 北海道大学, 獣医学部, 助教授 (60001533)
落合 健爾 (落合 謙爾) 北海道大学, 獣医学部, 助手 (80214162)
前出 吉光 北海道大学, 獣医学部, 教授 (40002084)
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研究概要 |
1.水鳥の鉛中毒の実態調査 過去3年間に121羽の水鳥を剖検した。これらの大部分の白鳥,マガンである。鉛中毒症の発生は,1989年は検査した32羽中19羽,1990年は51羽中47羽,1991年は24羽中3羽であった。これらの発生の大部分は北海道宮島沼においてであったが,北海道標茶町シラルトロ湖および群馬県多々良沼でも発生を見た。中毒症の原因は散弾鉛であったが,まれにつりのおもしであった。以上の調査から,水鳥の鉛中毒症は国内広域にわたって発生していることが示唆された。 2.水鳥の鉛中毒症の病態 鳥類(マガン,白鳥)を異にしても鉛中毒症の病態はほぼ同一であった。肉眼的には,筋胃粘膜の緑色化および過角化,骨髄の水腫または脂肪髓化,脾の萎縮,副骨腫大が見られ,腺胃から筋胃にかけて最高30ケまでの鉛散弾を入れていた。組織学的には,肝の黄胆,封入体を伴った尿細管腎症,肝と脾のヘモジデリン沈着症からなる亜急性鉛毒症病変を示していた。なお,血液内および臓器・組織内の鉛濃度は異常に高くなっていた。(肝では5.5〜44.3mg/kg)。 3.水鳥の鉛中毒症の診断・予防・治療 診断法として血中および組織中の鉛濃度の測定,X線撮影による胃内の鉛の確認,病理解剖による病変と鉛の確認が有効である。特に,生前あるいは病理解剖前のX線検査は速やかかつ容易になされるので好都合である。 治療法としてはCaーEDTAの連続投与が効果である。しかし,中毒症状があまりにも進行した例ではこの方法も効果がないようである。よって野外では,困難ではあるが,早期発見,早期治療が望ましい。
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