研究分担者 |
三木 直正 大阪大学, 医学部, 教授 (40094445)
藤沢 肇 名古屋大学, 理学部, 教授 (60079689)
高坂 新一 国立精神, 神経センター神経研究所, 部長 (50112686)
川村 光毅 慶応義塾大学, 医学部, 教授 (40048286)
野村 靖幸 北海道大学, 薬学部, 教授 (00034041)
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研究概要 |
脳の発生すなわち正確な神経回路網の形成が脳機能の遂行の根底にあるので,前者のメカニズムの研究は後者の解明に役立つ。また脳の高次機能の発現には知識や手順の記憶が正常であることが必須であり,記憶の基礎過程は,神経活動の反復した場合の効果が長期的永久的に残存すするいわれる可塑性であると考えられる。そこで脳の理解には神経系の発生と可塑性の研究がきわめて重要である。このメカニズムは分子レベル細胞レベルで解明されるべきであり,最近の一般的分子生物学,細胞生物学の進展をとり入れることにより,急展開が予想される。そこでこの調査研究では研究者に対するアンケ-ト調査,学会や専門雑誌についての資料調査,研究分担者との討論により,当該分野の研究の国外国内における現状を正確に把握し,今後わが国での研究を飛躍的に進めるための基礎資料を求めた。結果は研究成果報告書としてまとめたが,概略は次のとおりである。1。シナプス伝達の可塑性はセカンドメッセンジャ-系を介してタンパク質リン酸化酵素が活性化され,早期にはイオンチャネルのリン酸化等による機能変化が起こり,長期的には転写因子のリン酸化等による新たな遺伝子発現,タンパク質合成を通してシナプス構造が変化することによる。2。このメカニズムについては軟体動物での研究がもっとも広汎に進められているが,まだ統一的な見解は得られていない。3。哺乳動物では主に海馬と小脳について電気生理学的,薬理学的研究が行なわれているが,分子メカニズムの解明には一層の研究が必要である。4。わが国の神経科学研究者はほとんどすべてが脳の可塑性に興味を持っており,半数以上がその研究に着手している。5。わが国では研究室の規模の制約から,個々の研究者が応汎な研究を展開することが困難な場合が多いので,重点領域研究として組織的にとり組む意義が大きい。
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