配分額 *注記 |
29,000千円 (直接経費: 29,000千円)
1992年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1991年度: 5,100千円 (直接経費: 5,100千円)
1990年度: 21,400千円 (直接経費: 21,400千円)
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研究概要 |
本研究の目的は、砒化ガリウム(GaAs)の表面欠陥の疑問を「硫黄処理」を用いて、多面的に解明し、さらに制御技術を確立するというものである。その為に我々は、電子デバイスの基本構成である金属-半導体(MS)界面や、金属-絶縁体-半導体(MIS)界面を硫黄処理を用いて作製し、その界面電子物性、並びに構造を綿密に研究した。その結果、硫黄処理による表面(界面)欠陥の減少機構は、GaAs以外のIII-V族化合物半導体全般に共通であることを見い出した。さらに、複数の表面分析法(AES,LEELS,CAICISS,PES,STM,XSW,SPB,RHEED/LEED等)を駆使し、表面/界面構造の多面的解析を行った結果、その効果が、単分子層程度の厚さを持つ硫黄膜による表面被覆によってもたらされることを明らかにした。特に、硫黄原子が、(1)表面のV族元素と置換していること、(2)格子位置近傍に存在すること、(3)III族元素と化学吸着し、III-S結合を形成していること等を突き止めた。これらの知見に基づき、我々は表面(界面)欠陥の成因に関するモデルを提案したが、これはIII-S結合の持つ層状構造に注目したものであり、表面の不活性化が欠陥の生成を抑制すると考えた。中でも、欠陥の成因に関する研究は、全く新しい知見を与えた。すなわち、表面欠陥における複合点欠陥の存在(GaAsの場合、V_<AS>-As_<Ga>が支配的)を始めて発見した。これにより、現象論に留まらない、表面欠陥の成因を含めた、硫黄処理効果の総合的な議論を展開した。 一方、MSやMIS界面において、理想的な物性を実現する為の技術開発を行い、界面準位密度のさらなる低減に成功した。これは、絶縁膜堆積時の表面へのダメ-ジを極力抑えられる様に設計した、複合誘電膜に基づくものであり、硫黄膜の効果を劣化させない。併せて、硫黄処理の持つ幅広い応用分野{(1)MISFETの実現、(2)オーミック特性の改善や、ショットキー障壁高さの制御によるデバイス設計の自由度の増加、(3)超微細リソグラフィーへの応用性、(4)エピタキシャル基板としての有効性、等}の検討を行い、その実用性を示した。
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