配分額 *注記 |
32,400千円 (直接経費: 32,400千円)
1993年度: 4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
1992年度: 4,800千円 (直接経費: 4,800千円)
1991年度: 7,900千円 (直接経費: 7,900千円)
1990年度: 15,500千円 (直接経費: 15,500千円)
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研究概要 |
1)原発性肺癌組織におけるp53遺伝子異常を,免疫組織学的方法,PCR-SSCP法で検討した。その結果,p53の異常は扁平上皮癌,小細胞癌で高頻度に,腺癌では低頻度に認められた。またp53の異常は,喫煙者で高頻度に認められ,非喫煙者では認められなかった。したがってp53は喫煙者における肺癌発癌の標的遺伝子と考えられた。p53異常は腫瘍径が3cm以下のT1症例でも既に認められ,同一症例では原発巣と転移巣間を保存されていることから,発癌進展の比較的初期に生じた異常が,臨床的な進行の過程で維持されていると考えられた。さらに原発性発癌手術例97例のうち,治癒切除例の検討では,同異常を有する者は異常を有しない者に比し,有意に予後不良であった。 2)肺の線維化の機序について:特発性間質性肺炎の病因に,膠原病の関与が言われている。そのため膠原病自然発症マウスであるIpr/Ipr,その対照として,Ipr遺伝子を持たない+/+マウスを用い,シリカの直接気管内注入を行った,その結果,予想に反して1pr/1prよりも+/+マウスで線維化が強かった。また線維化病巣の形成には,好中球による活性酸素の関与も言われている。そのためオゾン感受性のC57/B16Jとオゾン低抗性のC3H/HeJマウスを用い,シリカとブレオマイシンを投与した。その結果,急性期の反応ではブレオマイシン投与において線維化はC57/B16Jで有意に強かった。しかしシリカ吸入では両群間に差を認めず,シリカとブレオマイシンによる線維化過程は異なる可能性が示唆された。 3)肺のサイトカインおよびその遺伝子発現:LPS刺激肺胞マクロファージのTNFα産生能は,健常者に比べサルコイドーシス患者で亢進していた。また喫煙者と非喫煙者間で比較すると,サルコイドーシス患者,健常者共に喫煙者で有意に低下していた。以上よりサルコイド病変の形成にTNFαが関与しており,従来より喫煙が肉芽腫性肺疾患の発症に抑制的に働くのは,そのTNFα産生の低下が関与していることが示唆された。 さらに微量のmRNAを増幅するRT-PCR法により,サルコイドーシス,過敏性肺炎,健常者において気管支肺胞洗浄細胞のIL-3,GM-CSF,M-CSFのmRNAの検出を行った。その結果IL-3はいずれの群でも検出されず,M-CSFは全ての群で検出された。GM-CSFはサルコイドーシス患者20名中15名において検出された。GM-CSF mRNAは過敏性肺炎では検出されず,ある程度サルコイドーシスに特異的と考えられた。GM-CSF産生者では臨床的に肺病変が不変,ないし悪化する例が多く,肺以外の病変を有するものが多かった。また気管支肺胞洗浄液中T細胞のCD4/CD8比も高かった。以上よりサルコイドーシスにおいてGM-CSUの産生は,病変形成とその維持に密接なかかわりがあることが示唆された。
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