研究概要 |
昨今,生活環境中に多種多様な形で存在する金属をアレルゲンとする,皮膚粘膜疾患が急増しており,マスコミ等で取り上げられることが多くなった.金属を多用する歯科領域における研究者,医療従事者としてはこれに関する詳細な知識と正しい見解を持つべきと考える.しかし,口腔内の歯科用金属による感作については,その発生率も機序も未だ不明確な点が多い.本研究は,口腔内に金属修復物を有する歯科患者および歯科医師,歯科技工士,歯科衛生士など歯科医療従事者の金属への感作率と口腔内金属との関連性を,補綴治療の既往がなく,金属に接する機会の少ない者と比較し,金属感作の機序の解明を目的として開始した. 本年度は,学生など主として20歳代のボランティアを対象とし,その出生地,最近5年間の居住地,アレルギー性疾患の有無とその症状などの問診,および口腔内診査をしたのちパッチテストを施行した多数例の中で,陽性反応を示した者の口腔内から微量試料を採取し,XRFSおよび教室既存のEPMAにより組成分析した.また,平成4年度に引き続き,皮膚科において金属アレルギーと診断された患者の口腔内から採取した微量試料を分析した. 歯科医療従事者の感作率に関しては,全被験者を24歳以上と24歳以下に分け,その感作率を全被験者と比較した結果,Hgへの感作率は24歳以下でやや高率であった.また,24歳以上を全被験者と比較したところ,他の試薬では年令と共に感作が増加していたにも拘らずHgでは逆に減少しており,若年期における感作が示唆された.歯科技工士は歯科用金属に接する機会が多く,感作率も高いのではないかと推測されたが,本調査では被験者数が少なく関連の有無を確定できなかった.
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