研究概要 |
情報化が進行するのにともなって,私たちのコミュニケ-ション・ネットワ-クが飛躍的に発展したことは從来の先行する諸研究でも確認されてきた。とりわけ,情報メディアの布置状況がマス・コミに加えてニュ-メディア・コミュニケ-ションを可能とするものに変化した様相は「コミュニケ-ションの3段の流れ」と呼ぶべき構造として定着しつつある。当然なことであるが,この変化は,情報処理過程,なかでも伝達過程を媒介する専門的なシステムである情報メディアの機能内容のみならず,各種のコミュニケ-ション・メディア,たとえば貨幣,権力,真理,愛などのメディア機能にも変化をもたらしている。 こうしたコミュニケ-ション構造の大規模な変化が,私たちの相互作用過程に結晶化するコミュニティの構造,すなわち,私たち相互の共同化契機となる各種の生活諸要素における何らかの公共的な共同性と拡散的な包括性が日常的な生活拠点に持続的な結合の場を形成している様相にも新しい展開を引き起こし,かつて近代化の歴史的な過程で伝統コミュニティに根底的な変化を生みだしたのに対応しうるような変化を運動的に生みだしつつあることが判った。典型的な問題は,コミュニティを成りたたせる様として人びとをつなぎ合わせる共同と包括のパタ-ンと規模が変化したことで,私たちのコミュニティ体験が「地図にないコミュニティ」と呼ぶべき情報空間によって促進されうるようになり,具体的な人間の相互作用として実体性をもっていた從来のコミュニティ観念に変化をもたらしつつある点にある。その根底には,第一次諸集団の機能と構造における変質過程が横たわっている。 ライフチャンスの構造は,このような変化の複合として成りたつ社会変動と相互に関連しながら,人びとそれぞれのライフスタイルに応じて定まっていることが明らかになっている。
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