研究概要 |
過疎地域は高齢化が高いのにも関わらず,在宅福祉に対する整備は不充分である。本研究は北海道農業(厚沢部町,士別市,上富良野市)漁業(岩内町)炭鉱(三笠市)地域5市町を対象にして,1.地域住民の在宅福祉サ-ビスに対する認知と社会福祉活動への参加意識,2.65歳以上地域住民の在宅福祉サ-ビスに対する意識,3.在宅要介護老人の介護実態,4.ケアシステム形成のための社会資源と社会サ-ビス供給状況の調査を終え,分析と考察した。 1.福祉サ-ビスのうち,よく認知されているのは入浴サ-ビス(65.9%)とホ-ムヘルパ-派遣制度(68.5%)であった。福祉活動への参加は,福祉バザ-や募金活動(18.9%)が最も高いものの,障害者・高齢者に対する実際の援助やボランティア活動となると4%〜1.5%と低下し,参加度は限定される。福祉サ-ビスの認知や参加に強く関連する変数は「近所付き合い」と地域に対する「貢献意欲」であった。 2.高齢者はあまり在宅福祉サ-ビスに期待していない(9.1%)。まだ家族の世話(38.4%)を求めている。現行サ-ビスについての費用負担感はサ-ビスの認知度から見て,若干回答に疑問があるが四分の一程度の人が妥当としている。移動可能であれば家族が対応して介護するが,限界になれば社会サ-ビスに頼るといい,48.5%の老人が介護手当てを求めている。 3.介護者の多くは配偶者で,高年令である。しかしサ-ビス利用に結びついていない。過疎地の在宅福祉はいま始まったばかり,社会資源も人材も不足,そしてニ-ズ把握もサ-ビス供給も客観的でなかった。利用者のスティグマも強い。施設の弾力的運用,サ-ビスの総合化,住民の意識への働きかけなど,計画的な現実的対応が緊急に行われることが必要である。
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