研究概要 |
1.われわれの共同研究は,主として森林,都市近郊緑地,河川,湖沼を対象とする自然保護法制の歴史的かつ比較的研究を目的とする。研究の視点は,(1)各国の自然保護法制の歴史的変遷を自然保護思想の展開過程との関連において明らかにすること,(2)各国の現行自然保護法制の特徴とそれを規定する要因を明らかにすること,(3)各国における自然保護法の運用の実態,(4)各国の自然保護法制における自然保護団体および個人の役割を明らかにすること,におかれている。 研究されるべき事項は,時間的にも空間的にも広い範囲に及ぶため,研究メンバーは,それぞれが実行可能な領域から研究を進めてきた。われわれの共同研究は現在も続けられており,その目標を達成するためにはさらに長い時間を必要とする。 2.諸外国に関する研究。イギリスについては,産業革命後,一般市民の市民生活享受にとって必要な,戸外活動やリクリエーションのために,自然に親しみ,土地を利用することを可能にするためにとられてきた法的措置が明らかにされた。ドイツについては,ドイツ連邦自然保護法(1976)に至る法制度の歴史的変遷とその中に実現された思想が解明された。ソビエト連邦およびロシヤ連邦共和国については,ペレストロイカの政治的動向を背景として現れた措置および自然保護立法(1991)の内容が明らかにされた。日本法についての研究成果は,多くの研究者によって蓄積されているので,比較研究の成果を作成するための条件ができつつある。 3.日本については,いくつかの地域を対象として,自然保護の現状と課題を調査した。中央政府の法令と並んで,地方政府の条例および環境保全を目的とする,事業者を一方当事者とする協定の重要性を強調する理論的フレームワークを提唱した。
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