研究概要 |
本研究の目的は,沖縄の社会文化的特性を背景に,21世紀の高齢社会を展望し,高齢期における家庭生活を中心に小学生から高齢者までの世代間関係を通して検証することであった。調査対象の2,700人を農村・都市・離島にまたがって平成2年10月から3年8月に面接併用のアンケ-ト調査を行った。その結果,次のような知見を得た。 1.老親扶養については,義務扶養,選択扶養を合わせると各世代とも90.2%と高い。扶養の担い手は各世代とも長男に偏向し,特に若者及び小学生の男性に強く見られた。一方,老親介護の担い手は,配偶者(妻)娘・嫁となっている。また,全体の68.2%に介護経験があった。 2.位牌継承意識では,性・世代・地域差がみられたが,長男最優先,息子優先が一貫していた。各世代とも男性より女性が娘許容型の意識が高く,その意識は世代が若くなるにつれて強まる傾向がみられた。位牌継承の実態では,長男優先が確認され,伝統的な女元祖のタブ-にもかかわらず高齢者女性の24.2%が祖先の位牌を継承していた。 3.高齢者の不満意識は,健康,役割喪失,不敬老,血縁関係の希薄化等が中心となっている。なお,16.1%の高齢者自身は不満がないとしているのに対し,他世代では高齢者を不満型と認知している。 4.高齢者の不安は,各世代とも健康不安が60.2%で高い。しかし,その度合は世代が低くなるにつれて高まっている。また,高齢・成人両世代では配偶者の死亡不安が10%で男性の不安度が女性より高かった。 5.過疎地域の農村では超高齢化が進展し,血縁による介護機能を地縁が補完していた。今後の課題として介護要員の確保,世代を越えた生活自立教育,それらを促進する情報システムづくりが重要である。 6.地縁・血縁共同体が解体傾向にある都市では,老人介護に向けて新しい地域形成,専門家・ボランティア・施設等の連携が不可欠である。
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