研究概要 |
超大空気シャワーに伴って観測される低周波電波の特徴を要約すると,(1)負のunipolar波形が最も多く観測され,低頻度ながら正のunipolar,bipolar波形が観測される(2)エネルギーが10^<14>evの宇宙線に対して,シャワー軸からの距離(R)5kmまで観測可能である。(3)電波の継続時間は1〜5μsである。(4)電波強度はほぼ^<-1>に比例している。となる。以上の結果と電波放射機構モデル計算結果との比較により,現在観測されている電波の主な放射機構がほぼ解明できた。すなわち,空気シャワー中の過剰陰電子(総電子数の約20%)がシャワー発達の経路に沿って減速されることにより電波が放射される。減速の原因となるのは電離損失と大気電場である。この放射機構では,アンテナと空気シャワー到来方向との幾何学的関係により宇宙線のエネルギーが同一で,Rが同じでも電波強度,波形が異り正負のunipolar,bipolar波形が期待でき,上期観測結果と良く一致する。また,電波強度についても計算結果と測定結果との一致は良い。しかし波形の幅については計算結果が約1μsであり上記(3)と一致しない。この差は測定装置での波形の変形だけでは説明しきれないが,計算結果についてもモデル近似(例えば,全電子はシャワ軸上にあるなど)を改良する必要はある。このように電波発生機構がほぼ解明できたので,モデル計算を用いて一次宇宙線のエネルギー,到来方向決定方法を検討した。電波アレイは5km間隔の格子状にアンテナ装置が設置されているものと仮定した。検討の結果,到来方向決定には時間差法は用いられないことが判った。最も良い方法は,各アンナテの受信電波強度分布を楕円で近似し,その長軸方向と離心率から決定することである。またエネルギーは,楕円の長軸上の電波強度分布から決定できる。シミュレーション計算に依れば,到来方向,エネルギーの決定精度はそれぞれ±3°,logEに対して±0.1となる。
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