研究概要 |
本研究の目的は走査型トンネル顕微鏡(STM)からの発光特性を調べ,その発光機構を実験的及び理論的に解析することにあった。 STMの発光計測法に関して,STM試料を半球プリズムの上に置きプリズム側(試料裏側)から発光計測を行うプリズム結合法を考察し,それを表現したSTM装置を試作した。このSTM装置は超高真空中で動作させることができる。プリズム側への発光特性(発光スペクトルや発光強度の角度依存)のバイアス依存性とバイアス極性依存を計測した。発光の角度依存計測には光マルチチャンネル検出器(PCーIMD),スペクトル計測には低分散分光器(400nm/12.5mm)とPCーIMDを用いたので,発光強度の時間的変動が角度依存性やスペクトル中の構造として現れることはない。 試料に金の蒸着膜,探針に白金を用い実験を行った。その結果,発光の角度依存は,探針側を負にバイアスした場合,43度にピ-クを持つことがわかった。この角度でプリズム中を進行する光の界面に平行な波数は表面プラズモンの波数と一致する。従って,この43度方向の発光は表面プラズモンからの発光であると言える。この実験事実とSTM発光現象に関する理論計算の結果から,発光機構は,トンネル電子により励起されたロ-カル・プラズモンが表面プラズモン"崩壊"した後,プリズム側に発光したものであることが明かになった。
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