研究概要 |
東北日本の先第三系の構造帯区分の再検討のために,東北日本の各構造帯を構成する先第三紀堆積岩・変成岩類の層序・年代,地質構造,火成岩類の化学組成などの検討を行った。 1.その年代や構造帯区分上の帰属に諸説があった。南部北上帯西縁部に分布する松ヶ平・母体変成岩類は,おそらくはカンブリア紀後期〜オルドビス紀前期に高圧型変成作用をうけたものであり,南部北上帯の浅海成古生界に不整合におおわれる,南部北上帯の先シルル紀基盤のひとつである。 2.南部北上帯(+早池峰構造帯)と,隣接する,主としてジュラ紀付加体あるいはそれらの変成相から構成される,阿武隈帯や葛巻ー釜石帯との境界は,高角をなす,横ずれ断層あるいは逆断層である。このことと、火山岩・噴出岩類中の捕獲岩類の検討から,南部北上帯構成岩類の構造的下位に、ジュラ紀付加体は存在しない。 3.北部北上山地の先第三系を葛巻ー釜石帯と安家ー田野畑帯に区分する考えの根拠のひとつとなっていた。両帯における砂岩組成の違いが北部北上山地の広い範囲で確認された。 4.北上山地の白亜紀花崗岩は、比較的未成熟な島弧あるいは陸弧のもので,その微量元素組成は北上山地全体でほとんど差がない。 以上のような結果から,南部北上帯(+早池峰構造帯)と周囲のジュラ紀付加体を主体とする地帯とは明瞭に区別される。また,南部北上帯がジュラ紀付加体の上にのるクリッペであるという考えは否定された。東北日本の先第三系の堆積岩・変成岩に基づく構造帯区分としては,中川ほか(1989)による区分,すなわち西から,阿武隈帯,南部北上帯,早池峰構造帯,葛巻ー釜石帯,安家ー田野畑帯とする区分が現在のところ妥当である。
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