研究課題/領域番号 |
02452072
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
応用物性
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 良一 東京大学, 工学部, 教授 (40133102)
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研究分担者 |
近藤 高志 東京大学, 工学部, 助手 (60205557)
小笠原 長篤 電気通信大学, 電気通信学部, 助教授 (90134486)
五神 真 東京大学, 工学部, 助教授 (70161809)
尾鍋 研太郎 東京大学, 工学部, 助教授 (50204227)
花村 榮一 東京大学, 工学部, 教授 (70013472)
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研究期間 (年度) |
1990 – 1991
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研究課題ステータス |
完了 (1991年度)
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配分額 *注記 |
5,700千円 (直接経費: 5,700千円)
1991年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1990年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | 量子井戸 / 層状物質 / 低次元物質 / ペロブスカイト / 非線形光学 / 構造相転移 / 励起子 / ペロブスカイト型構造 / 室温励起子 |
研究概要 |
層状ペロブスカイト型新物質、特に(C_<10>H_<21>NH_3)_2PbI_4(C_<10>PbI_4と略記)および関連物質の物性を光学的性質を中心に研究し、この物質の2次元性を強く反映したいくつかの興味深い現象を見出した。特に、C_<10>PbI_4の3次非線形光学係数の最大値は0.7×10^<-9>esuと極めて大きいことを初めて明らかにした。 1.C_<10>PbI_4の結晶構造解析を行い、逐次構造相転移のシ-クェンスを明らかにした。Pbサイトの局所的な環境はいずれの相でもほとんど同じであるが、室温相(II相)から低温相(III相)への転移の際にPbーIーPbの結合角が不連続に大きく変化する。 2.C_<10>PbI_4の吸収・反射・発光スペクトルを調べた。IIーIII相転移に伴って最低励起子吸収ピ-クは0.1eVブル-シフトする。1.の構造相転移の知見と考えあわせると、C_<10>PbI_4の励起子はPbの軌道から形成されているとするカチオニックモデルは適当でなく、Iの5p軌道の寄与がかなりあることを示す。 3.C_<10>PbI_4の電場変調吸収分光より、励起子は強い2次元的性質を示し、大きな束縛エネルギ-(〜590meV)をもつことが明らかになった。 4.40Tまでの強磁場を用いC_<10>PbI_4の磁気吸収分光を行った。ファラディ配置での反磁性シフトから、励起子の束縛エネルギ-(〜360meV)を見積った。フォ-クト配置では吸収ピ-クのシフトは観測されず、この物質の励起子が2次的であることを示す。 5.基本波の波長1.77μm〜1.50μmの範囲でC_<10>PbI_4の第3高調波発生の実験を行った(室温)。波長1.53μmで励起子に共鳴する大きな3次光学非線形性が観測された。χ^<(3)>の最大値は0.7×10^<-9>esuで、1次元共役高分子ポリジアセチレンの共鳴値と同程度である。 6.C_<10>PbI_4の光伝導を初めて観測した。伝導キャリアは励起子の解離に由来し、[PbI_6]無機層内を2次元的に運動するものと思われる。 7.C_6PbI_4は室温以下の温度で相転移を示さない。この物質についても一連の光物性の実験を行っているところである。 以上の研究成果によって、自然量子井戸構造をもつペロブスカイト物質、特にC_<10>PbI_4が他に類を見ない理想的な2次元物質であることが明らかとなった。電気伝導、線形・非線形光学特性はいずれも2次元性を反映した強い異方性を示す。今後は非線形光学と励起子のダイナミックスに焦点を絞り研究を発展させる計画である。
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